もし米中関係がさらに険悪化すれば、米海軍は海上自衛隊、豪州海軍を伴って中国沿岸の封鎖をすることは可能だ。だが中国の食料自給率はほぼ100%で輸入しているのは大豆だけ。石炭が豊富だからエネルギーの自給率も80%に近く、ロシアからのパイプラインもあり、中国が封鎖に屈する公算は低い。
核を使うと共倒れになるから通常弾頭のミサイルや、航空攻撃で都市や軍事拠点の破壊はできても、支配するには地上部隊による占領が必要だ。
黄海最奥部の天津付近から北京へは約180キロ。大損害を覚悟すれば米軍が北京に到達することは可能だろう。だが日中戦争では、首都南京を失った蒋介石は重慶に籠って抗戦を続け、日本軍は最大140万人を投入したが点と線しか確保できなかった。米軍が9年間苦戦して敗退したベトナムは、南北合わせて面積は中国の28分の1、人口は15分の1だった。
米中が戦争となれば日本は輸出の19.1%(香港を合わせると約24%)を占める中国市場を失い、致命的打撃となる。さらに中国が米軍の攻撃に対抗し、その拠点である在日米軍、自衛隊の基地や都市をミサイルで攻撃してくることも当然あり得る。
日本の安全保障にとり、米中の対立を激化させず、戦争を阻止することは必須だ。オーストラリアと同盟して中国包囲網に加わり、米国の背中を押してドロ沼に落とすようなことは、菅氏が討論会で言った通り「戦略的に正しくない」だろう。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)
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