だが、コートで怒りを爆発させる選手は相変わらず減らない。一体、なぜなのか、元プロテニス選手の神和住純・法政大教授に訊いた。
壊す理由
神和住氏は「どんなプロ選手でも、テニスを始めた時は『ラケットを大事にしなさい』と教わったはずです」と言う。
「子供の時、ラケットを宝物のように抱きしめて寝たことのある選手も多いでしょう。とはいえ、人目のない練習中ならラケットを壊したプロ選手はたくさんいるに違いありません。『人生で1度もラケットを壊したことのない選手はいない』と断言してもいいくらいです」
プロ選手がラケットを壊すのは、極めてシンプルな理由だ。「スッキリするからです」と神和住氏は指摘する。
「ラケットを壊せば厳しく批判されることを、選手は分かっています。スポンサーだって今も昔も、ラケットを壊した選手に抗議します。審判が命じる罰金は安くとも、スポンサーは多額の罰金を契約書に明記するケースも珍しくありません。それでも選手がラケットを壊すのは、試合の悪い流れを断ち切りたいからです」選手はラケットを壊す「デメリット」と「メリット」を天秤にかけ、メリットが多いと瞬時に判断すればラケットを壊し、「スッキリ」するのだ。
BBCのラッセル・フラー・テニス担当編集委員は、4大大会主催者が共同声明を出すのは珍しいことで、大きな行動だと説明。大坂は今回、表現が好ましくない声明を出すなど、判断を誤ったと思えるとした。
イギリスのネイオミ・ブローディ選手はBBCラジオで、賞金の大部分はメディアの放映権料が原資となっていると指摘。メディアに関わらないなら大会に参加すべきではないと述べた。
元イギリスナンバー1のローラ・ロブソン選手は、記者会見で泣きそうになった経験は多くの選手に共通するだろうと大坂の主張に一定の理解を示した。その一方で、取材対応は仕事の一部だと常に考えてきたとし、試合後30分以内とされている会見開始の時間を遅らせる場合があるなど、大会主催者側も選手に一定の配慮をしているとBBCラジオで話した。
元イギリス選手のネイオミ・キャヴァデイは、大坂がWTAや全仏オープン主催者らと事前協議なしに取材拒否の声明を出したのは対立的だと、BBCラジオで評した。
https://www.bbc.com/japanese/57303469