エリートアスリートの腸内には、運動能力を高める細菌が棲息しているようだ、という米国ハーバード大学、ジョスリン糖尿病センターなどによる研究報告。この細菌をマウスに投与すると運動能力が顕著に向上することもわかった。
これはベイロネラ属の細菌で、座位の多い人々の腸にはみられないという。
ベイロネラは、運動したときに生産される乳酸を代謝してプロピオン酸に変える。ヒトの身体は、このプロピオン酸を利用して運動能力を改善するという。「高められた運動能力を持つことは、全般的な健康と心血管疾患、糖尿病、早死に対する保護効果の強い予測因子である」と共同研究者のアレクサンダー・コスティック博士は語っている。「我々は、人々がそれを飲めば運動能力が高まり慢性疾患になりにくくなるようなプロバイオティックサプリメントを見据えている」研究は、2015年のボストンマラソンにおける糞便検体の採取から始まったという。筆頭著者のジョナサン・シャイマン博士は当時、ハーバード大医学部のジョージ・チャーチ博士の研究室に所属しており、マラソンの1週間前から1週間後にかけて検体を集めた。同時に、座位行動中心の人々からも検体を集めた。シャイマン博士は検体をコスティック博士のところに持っていき、どのような細菌が含まれているかを分析してもらった。
「ただちに我々の注意を惹いたものの一つは、この単一の細菌、ベイロネラだった。それは明確に、マラソンを終えたばかりのランナーの腸内に豊富に存在していた。ベイロネラはまた、ランナーにおいて、座位中心の者よりも豊富に存在していることがわかった」とコスティック博士は語っている。
研究チームは、マウスモデルを用いて運動能力の改善との関連を確認した。その結果、ベイロネラの補給を受けた後でマウスのランニング能力は顕著に上昇したという。そこで次にチームはそれがどのように作用しているのかを検討した。
「我々はベイロネラが比較的ユニークな腸内細菌であることを発見した。それは乳酸を唯一の炭素源とする生物だったのである」と博士は語っている。
乳酸は、運動をしたときに筋肉が生成する。ベイロネラは、この運動の副産物を主要な食物源として使うのである。「我々がすぐに考えた仮説は、乳酸の蓄積が筋肉疲労の原因となるので、それが乳酸除去のための代謝シンクとして働くのだろう、ということだった」とコスティック博士は言う。「けれども、サラ・レッサード(ジョスリン糖尿病センターの臨床研究者)のような運動生理学の研究者らと話しているうちに、乳酸の蓄積が疲労の原因となる説は現在では正しくないとみなされていることを知った。それで、もう一度考え直すことになったわけだ。」
コスティック博士ら研究チームは、再び運動能力向上の原因について考え始めた。チームはメタゲノム解析をして腸内細菌叢の全遺伝子を明らかにし、ベイロネラの乳酸代謝によってなにが起きるかを知ろうとした。そして、運動後には、乳酸を短鎖脂肪酸であるプロピオン酸に変換する酵素が増加していることを発見したという。
「そこで、問題は乳酸の除去からプロピオン酸の生成に移った」と博士は言う。「我々はマウスに浣腸を使ってプロピオン酸を導入して運動能力が向上するかどうか検証したところ、その通りであった。」
コスティック博士の研究チームは、レッサード博士らと共同でプロピオン酸が運動能力にどのように影響するかそのメカニズムについて検討する計画であるという。
腸内細菌叢は、我々の健康に強いインパクトを有している。運動は健康的な生活習慣の重要な構成要素のひとつであり、2型糖尿病などのリスクを低減するといわれている。しかし、代謝疾患の多くの患者が、有益とされるレベルの運動をすることができない。ベイロネラのプロバイオティクスサプリメントによって、彼らが効果的に運動できるようになる可能性はあるだろうということだ。というのも、短鎖脂肪酸であるプロピオン酸を服用しても、有効性を発揮する前に消化液で分解されてしまうと考えられるからだ。シャイマン博士は、このアイデアを実現すべくアスリートにターゲットを絞った会社を設立したという。
少なくとも座りっぱなしで乳酸菌を作らない方、、
つまり筋肉疲労しないかたには存在しない腸内細菌という事です。
普段の適度な運動と、、
時々は、筋肉痛起こす運動を取り交ぜていきましょう。
アスリートの便を移植するということになりますね。